成年後見人の不動産売却について!申立て手続きも解説

認知症などのご事情で判断能力が低下したご家族に代わり、施設の入居費用などを捻出するために不動産を売却したくても、何から始めればよいのかお困りではありませんか。
名義人ご本人の意思確認が難しい状態のままでは売買契約を進めることができず、複雑な手続きや思わぬトラブルに発展してしまうリスクも潜んでいます。
本記事では、このような問題を解決する「成年後見制度」の基礎知識をはじめ、家庭裁判所への申立ての流れや売却時の注意点について解説します。
ご家族の大切な資産を守りながら、適正かつスムーズに不動産の売却手続きを進めたいとお考えの方は、ぜひご参考になさってくださいね。
成年後見制度とは?

成年後見人による不動産売却を検討する際、制度には主に法定後見と任意後見があるため、まずは基本をおさえる必要があります。
本記事では、制度の背景や種類ごとの特徴、売却時のメリットについて解説していきます。
制度の背景と主な目的
成年後見制度は、認知症や障害などにより判断能力に不安がある方を、法律面から支える仕組みです。
以前は財産保護の役割が中心でしたが、現在は本人の意思や尊厳を大切にする考え方が重視されています。
その背景には、高齢になっても住み慣れた地域で暮らし続けたいという希望の広がりがあるでしょう。
また、障害の有無に関わらず共に暮らす社会を目指す考え方も、制度を支える土台となっています。
不動産売却においても、本人の生活資金や希望をふまえ、無理のない選択へつなげる役割を果たします。
法定後見と任意後見
成年後見制度には、判断能力が低下した後に利用する法定後見と、元気なうちに備える任意後見があります。
法定後見では、家庭裁判所が本人の状態に応じて後見・保佐・補助のいずれかを決め、後見人などを選任します。
そのため、契約や財産管理を任せられる一方、家族が希望する人物が選ばれるとは限りません。
一方で、任意後見は本人が信頼できる相手を選び、公正証書で任せたい内容を決めておく制度です。
ただし、効力が生じるのは家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後になります。
不動産売却時のメリット
成年後見人がいると、本人に代わって売買契約や登記に関する手続きを進められる点が大きなメリットです。
本人の判断能力に不安がある場合でも、正当な権限を持つ後見人が関わることで、取引の流れを整理しやすくなります。
さらに、売却代金を医療費や介護費、施設入居費などに充てる計画も立てやすいでしょう。
また、売却理由や資金の使い道を客観的に説明できるため、親族間の理解を得やすくなります。
家庭裁判所の監督もあるため、手続きを落ち着いて進められる点も安心につながります。
成年後見人の申立て手続きと必要書類

前章では、成年後見制度の概要やメリットについて述べましたが、実際に利用するには具体的な準備が必要です。
ここでは、申立てから完了までの手続きの流れや必要書類、発生する費用について解説します。
申立ての流れと期間
申立ては、親族などが必要書類をそろえ、本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出するところから始まります。
まずは、本人の生活状況や財産内容を整理し、候補者がいる場合はその情報もまとめておきましょう。
申立て後は、申立人や候補者への面接、本人の状況確認、親族への意向照会などがおこなわれます。
また、必要に応じて医師による鑑定が実施される場合もあるため把握しておくと安心です。
審判後は2週間の不服申立て期間を経て確定し、法務局で後見登記がおこなわれます。
全体では3か月~5か月ほどかかるため、売却予定から逆算して準備することが大切です。
必要書類の入手と確認
必要書類は、本人の状態を示す書類と、身分や財産を確認する書類に分けて準備すると進めやすくなります。
診断書は家庭裁判所の書式を使い、かかりつけ医などに日常生活や金銭管理の状況も伝えて作成を依頼します。
戸籍謄本や住民票は市区町村の窓口で取得し、基本情報に誤りがないか確認しましょう。
また、後見制度を利用していないことを示す証明書は法務局で取得できます。
財産目録には預貯金や保険、不動産、負債を記載し、通帳のコピーなどを添付します。
不動産については、登記事項証明書や固定資産税の課税明細書も用意しておくと良いでしょう。
申立て費用と注意点
申立てでは、収入印紙や登記手数料、郵便切手代などの実費が必要になります。
目安として、申立手数料は800円、登記手数料は2,600円、切手代は数千円ほどです。
ただし、医師の鑑定が必要になった場合は、5万円~10万円程度の費用がかかることもあります。
書類作成や財産整理に不安がある場合は、弁護士や司法書士へ相談する方法もあるでしょう。
専門家報酬は事案によって異なりますが、10万円~20万円程度を見込むケースがあります。
また、一度申立てをすると家庭裁判所の許可なく取り下げられないため、家族で見通しを共有しておきましょう。
成年後見人が不動産を売却する方法と手順

ここまで、成年後見制度の基本や申立ての手続きを解説しましたが、実際の売却活動における注意点もおさえておきましょう。
最後に、物件ごとの売却方法や実務の要点、売却後の管理対応について解説していきます。
物件別の売却手順
成年後見人が不動産を売却する際は、物件が居住用か非居住用かによって手続きが変わります。
居住用不動産には、現在の住まいだけでなく、過去に住んだ家や将来戻る可能性がある生活拠点も含まれます。
そのため、施設入所後に空き家になっていても、家庭裁判所の売却許可が必要になる場合があるため注意が必要です。
許可を得るには、申立書や登記事項証明書、売買契約書案、査定書などを提出します。
そして、生活費や介護費に充てるなど、本人のために売却する理由を示すことが重要です。
一方で、投資用物件などの非居住用不動産は原則として事前許可が不要ですが、監督人の同意が必要な場合もあります。
売却活動から契約まで
売却活動では、まず物件の状態や周辺相場を確認し、本人にとって無理のない売出価格を整理することが大切です。
成年後見人には、本人の利益を守りながら財産を管理する善管注意義務があります。
そのため、価格や条件が妥当かを慎重に確認し、安易に契約を進めない姿勢が求められるでしょう。
不動産会社との媒介契約は後見人が結び、登記事項証明書などで代理権を示します。
また、内見対応では鍵の管理や家財の整理について、不動産会社と相談しながら進めると安心です。
居住用物件では家庭裁判所の許可を条件とする特約を契約書に入れておくと、買主側も準備しやすくなります。
売却後の管理と手続き
売却代金は、成年被後見人本人の名義口座で受け取り、家族など他の資金とは分けて管理します。
決済や所有権移転登記が完了したら、通帳のコピーや売買契約書を添えて家庭裁判所へ報告しましょう。
その後の定期報告でも、不動産が減り預貯金が増えた変化を財産目録へ反映させます。
また、譲渡所得が生じた場合は、後見人が代理で翌年に確定申告をおこなう必要があります。
自宅の売却では3,000万円の特別控除を利用できる可能性もあるため、税務署や税理士へ相談すると安心です。
売却後の管理まで丁寧に進めることで、本人の生活を支える資金として適切に活用しやすくなります。
まとめ
成年後見制度は判断能力に不安がある方の暮らしと財産を守り、権限を持つ後見人が代理人として不動産売却を進める仕組みです。
利用には家庭裁判所への申立てが必要で、登記完了まで3か月~5か月ほどかかるため、早めの書類や費用の準備が大切です。
居住用不動産の売却では家庭裁判所の許可を得て、売却後も本人のために資金管理や必要な確定申告をおこないましょう。

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